講義回 | テーマ | 具体的な内容 | 担当教員 |
1 | 《「生命」と「生物」は何が違うのか》 「生物」と「生命」は密接に関連した言葉であり、我々は文脈に応じて使い分けている。一方、生命は「企業生命」等のように明らかに非生物の対象にも用いられる。我々が非生物にも生物性(生き物らしさ)を感じていることを表している。「生命」とは何かを考える端緒として、我々の日常的な生命観を探る。また、本授業全体の下地として、現在、生命が学問的にどのように取り扱われているかを講義し、決して決着がついている訳ではないことを紹介する。 | 1st class for general introduction of 'what is life?', especially the difference of 'sei-mei' and 'sei-butsu' in Japanese. | |
2 | 《粘菌を事例に考える1 知性とはなにか》 我々の生命観をさらに読み解くため,授業で実際の生物を紹介する。「真正粘菌」と呼ばれる微生物を小さなプレートに用意し,学生に1枚ずつ配る予定である。粘菌は単純な構造しか持たない単細胞生物だが,実は驚くべき能力を持つことが分かっている。この能力を解説したうえで,この能力を「知性」と呼ぶことができるか,議論をする。 配布したプレートは持ち帰り,各自観察することが可能である(持ち帰りたくない学生には強要しない)。その上で,粘菌の能力は知性と呼べるのか,知性とはなにか,我々には能力があり粘菌には無い,と断ずることができるのか,「知性」を生命の特徴に含めることが可能か,考えを巡らせる。(なお,授業で用いる粘菌には毒性,病原性は無く,遺伝子組替体でもない)
| 2nd class to seek the meaning of 'intelligence' with living organism of slime mold as classtime material. | |
3 | 《粘菌を事例に考える2 判断とはなにか》 前回同様,「真正粘菌」をテーマとして生命の特徴について考える。本日のテーマは「判断する」という能力である。粘菌に限らず,自然のなかで生きる生き物は,生き延びるために,好ましい環境(餌など)に寄り,好ましくない環境からは遠ざかる必要がある。このために必要なのは「判断する (あるいは選択する)」という能力である。多くの生物は「判断する」能力を保持しているように思えるが(さもなければ自然環境の中で生き延びることは難しいだろう),これを生命の特徴のひとつとして挙げることはできるか。さらに,判断に苦しむ状況である「迷い」というものについても議論する。
| 3rd class to think about the ability of 'compare' and 'judge', and here we try to compare our abilities and those for slime mold. | |
4 | 《粘菌を事例に考える3 自由意志とはなにか》 前回の授業で最後に取り上げた「迷い」を再び取り上げる。機械はおそらく「迷う」ことはないだろう。あるいは,単純な物理現象に「迷い」は見られるのか。「迷う」とは,高度な知性の現れではないのか。そして,このことを語るうえで「自由意志」に関する議論を避けることはできない。粘菌に見られた迷いという現象を広げ,量子力学から脳科学まで見渡して,自由意志はどのように存在するのか,そしてそれは生命の特徴といえるのかについて議論する。
| 4th class to think about the 'free will' in slime mold, in our brain and in our physical world. | |
5 | 《1回目プレゼン》 「粘菌の能力と我々の能力は,何が違うのか」「粘菌の能力を「知的」と評価することはできるか」「判断・選択する能力は生命の特徴なのか」などをテーマとして、各自が意見を発表し、各発表について議論する。 | 1st presentation by students. | |
6 | 《意識とはなにか、意思とはなにか》 人工生命に関連して、最近、生命に関する問題が提起された。人間と比較すると単純なエージェントであるロボットも、意識と意志の定義に疑問を投げかけている。授業ではビデオ分析とアンケートを使用して、「単一の行動」と「相互作用(学習)の行動」という二つのロボットの行動に関する人間観察研究を行う。 自動的行動と自律的行動の比較は、行動主体性(エージェンシー)の人間中心の概念に疑問を投げかけている。学習ロボットは主観的な行動をどの程度表示しているか?自律的な行動・主観的な行動・行動主体性は何を区別するか?主観的な行動には相互作用が必要か? | 6th class to deal with the consciousness and intension. | |
7 | 《群れが意識を持つ」という問題》 エージェントが自律的に行動した場合、このエージェントの行動はどの程度まで共エージェント(co-agents)のグループに依存するのか?または、グループの行動はどの程度まで単一のグループメンバーに依存するのか?「群知能」(swarm intelligence)という概念により、個々のエージェントを超えて知的行動を説明するアプローチが最近生み出された。しかし同時に、群れも自分のメンバーに依存するため、個々のエージェントの認知能力を考慮する必要がある。 認知科学的観点から粘菌とほかのエージェントの行動を分析して、個体と集団の行動制御がどのように相互に依存しているかを検討する。この目的のために「認知的分析」という方法を導入する。 | 7th class to think about the 'consciousness of swarm'. | |
8 | 《2回目プレゼン》 「意識と意思-それは生命の特徴と言えるか」をテーマとして、各自が意見を発表し、各発表について議論する。 | 2nd presentation by students. | |