タイトル

科目名[英文名] 「生命」の科学と哲学[Life in science and phylosophy] 
担当教員[ローマ字表記] 垣内 康孝[KAKIUCHI, Yasutaka], GRUENEBERG PATRICK[GRUENEBERG, Patrick] 
科目ナンバー -----  科目ナンバリングとは
時間割番号 10043  科目区分 ----- 
講義形態 -----  開講学域等 人間社会学域 
適正人数 12人  開講学期 Q4 
曜日・時限 水3  単位数 1単位 
授業形態 対面と遠隔の併用(対面≧遠隔)  60単位上限 対象外 
対象学生 ----- 
キーワード 生命、生物、知性、判断、意識、意思、主体性、エージェンシー、集団 
講義室情報 総合教育講義棟 B2講義室(対面と遠隔(双方向)の併用) 
開放科目 ----- 
備考 ----- 

授業の主題
「生命」は、生物一般の属性であると同時に、「選手生命」「社会生命」等と拡げて用いられ、学術語というよりは生活語として馴染み深い言葉であろう。しかし、では「生命とは何か」と問われると、明瞭に答える(定義する)ことは難しい。生命科学と呼ばれる学問分野から明らかなように明確な科学の対象であると同時に、定義が困難で文化的コンテキストに影響される表象である。生命は今日的にどう取り扱われるのか、生命の本質とは何か。科学と哲学の両面から迫る。
 
学修目標(到達目標)
生命は決して自明で固定した概念ではなく、多面的で多義的な概念である。授業では生命に付随して挙げることのできるいくつかの概念を取り上げ、これを生命の属性と考えてよいか、議論する。また、全8回のうち2回を学生による発表(および討論)に充てる。発表と討論を通して、個々の学生が「自らの生命観」を醸成することを期待する。
 
授業概要
1~4回を垣内が担当し、6、7回をグリューネベルクが担当する。5回および8回は学生による発表および議論を行う。
 
講義スケジュール
講義回テーマ具体的な内容担当教員
1《「生命」と「生物」は何が違うのか》
「生物」と「生命」は密接に関連した言葉であり、我々は文脈に応じて使い分けている。一方、生命は「企業生命」等のように明らかに非生物の対象にも用いられる。我々が非生物にも生物性(生き物らしさ)を感じていることを表している。「生命」とは何かを考える端緒として、我々の日常的な生命観を探る。また、本授業全体の下地として、現在、生命が学問的にどのように取り扱われているかを講義し、決して決着がついている訳ではないことを紹介する。
1st class for general introduction of 'what is life?', especially the difference of 'sei-mei' and 'sei-butsu' in Japanese. 
2《粘菌を事例に考える1 知性とはなにか》
我々の生命観をさらに読み解くため,授業で実際の生物を紹介する。「真正粘菌」と呼ばれる微生物を小さなプレートに用意し,学生に1枚ずつ配る予定である。粘菌は単純な構造しか持たない単細胞生物だが,実は驚くべき能力を持つことが分かっている。この能力を解説したうえで,この能力を「知性」と呼ぶことができるか,議論をする。
配布したプレートは持ち帰り,各自観察することが可能である(持ち帰りたくない学生には強要しない)。その上で,粘菌の能力は知性と呼べるのか,知性とはなにか,我々には能力があり粘菌には無い,と断ずることができるのか,「知性」を生命の特徴に含めることが可能か,考えを巡らせる。(なお,授業で用いる粘菌には毒性,病原性は無く,遺伝子組替体でもない)
2nd class to seek the meaning of 'intelligence' with living organism of slime mold as classtime material. 
3《粘菌を事例に考える2 判断とはなにか》
前回同様,「真正粘菌」をテーマとして生命の特徴について考える。本日のテーマは「判断する」という能力である。粘菌に限らず,自然のなかで生きる生き物は,生き延びるために,好ましい環境(餌など)に寄り,好ましくない環境からは遠ざかる必要がある。このために必要なのは「判断する (あるいは選択する)」という能力である。多くの生物は「判断する」能力を保持しているように思えるが(さもなければ自然環境の中で生き延びることは難しいだろう),これを生命の特徴のひとつとして挙げることはできるか。さらに,判断に苦しむ状況である「迷い」というものについても議論する。
3rd class to think about the ability of 'compare' and 'judge', and here we try to compare our abilities and those for slime mold. 
4《粘菌を事例に考える3 自由意志とはなにか》
前回の授業で最後に取り上げた「迷い」を再び取り上げる。機械はおそらく「迷う」ことはないだろう。あるいは,単純な物理現象に「迷い」は見られるのか。「迷う」とは,高度な知性の現れではないのか。そして,このことを語るうえで「自由意志」に関する議論を避けることはできない。粘菌に見られた迷いという現象を広げ,量子力学から脳科学まで見渡して,自由意志はどのように存在するのか,そしてそれは生命の特徴といえるのかについて議論する。
4th class to think about the 'free will' in slime mold, in our brain and in our physical world. 
5《1回目プレゼン》
「粘菌の能力と我々の能力は,何が違うのか」「粘菌の能力を「知的」と評価することはできるか」「判断・選択する能力は生命の特徴なのか」などをテーマとして、各自が意見を発表し、各発表について議論する。
1st presentation by students. 
6《意識とはなにか、意思とはなにか》
人工生命に関連して、最近、生命に関する問題が提起された。人間と比較すると単純なエージェントであるロボットも、意識と意志の定義に疑問を投げかけている。授業ではビデオ分析とアンケートを使用して、「単一の行動」と「相互作用(学習)の行動」という二つのロボットの行動に関する人間観察研究を行う。
自動的行動と自律的行動の比較は、行動主体性(エージェンシー)の人間中心の概念に疑問を投げかけている。学習ロボットは主観的な行動をどの程度表示しているか?自律的な行動・主観的な行動・行動主体性は何を区別するか?主観的な行動には相互作用が必要か?
6th class to deal with the consciousness and intension. 
7《群れが意識を持つ」という問題》
エージェントが自律的に行動した場合、このエージェントの行動はどの程度まで共エージェント(co-agents)のグループに依存するのか?または、グループの行動はどの程度まで単一のグループメンバーに依存するのか?「群知能」(swarm intelligence)という概念により、個々のエージェントを超えて知的行動を説明するアプローチが最近生み出された。しかし同時に、群れも自分のメンバーに依存するため、個々のエージェントの認知能力を考慮する必要がある。
認知科学的観点から粘菌とほかのエージェントの行動を分析して、個体と集団の行動制御がどのように相互に依存しているかを検討する。この目的のために「認知的分析」という方法を導入する。
7th class to think about the 'consciousness of swarm'. 
8《2回目プレゼン》
「意識と意思-それは生命の特徴と言えるか」をテーマとして、各自が意見を発表し、各発表について議論する。
2nd presentation by students. 
 

評価方法と割合
評価方法
8回目の授業を終えた後、レポート提出を課す。テーマは「私の生命観」。2000字程度。
 
評価の割合
授業での活動(議論への参加、発表) 50%
レポート 50%
 
授業時間外の学修に関する指示
予習に関する指示
授業はグループでの議論を主体に行う。議論のテーマを事前にポータルに掲示するので,各自,事前に思考を巡らせておく。
 
予習に関する教材
オンデマンド教材以外の指示・課題
 
復習に関する指示
・授業で紹介する話題は,2回実施するプレゼンテーションのための重要な題材,視点となるので,毎回の授業後に振り返り,プレゼンテーションを構築して欲しい。
・プレゼンテーションを行った授業回では,他グループの発表内容を咀嚼し,視点の違い(または類似性)について考察して欲しい。
・粘菌を授業教材として用いた回は,ぜひ,持ち帰った粘菌を観察して「生命とはなにか」について思索を深める題材として欲しい。
 
復習に関する教材
オンデマンド教材以外の指示・課題
 
教科書・参考書
特になし
オフィスアワー等(学生からの質問への対応方法等)
オフィスアワーについては授業内で説明する。
 
履修条件
適正人数
12名。
 
特記事項
特記事項
学類を問わず受講可能です。
 

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